シフォンケーキよりガトーショコラの方が美味しい

好きな作家の本を二冊借りた。片方は文學界新人賞、もう片方は芥川賞を受賞していて、この二冊を除く彼女の作品はすべて読んでいる。あ、うそ。まだ読んでない一冊があった。芥川賞候補作のやつ。

作家読みするとき、なんとなく代表作や受賞作を避けるところがある。これは完全にaikoの影響だと自負している。aikoはシングル曲よりアルバム曲が、アルバム曲よりカップリング曲の方が圧倒的に深くてクセがあって飽きない。「え、マイナー曲のがいいじゃん」という児童期の発見が、未だあらゆるコンテンツへの姿勢に適用されている。

マイナー曲には、aikoaiko性がより濃厚な形で留められている。一方メジャー曲は万人にウケる必要がある(あるいは、結果として万人にウケている)から、そんなびっくりするような曲展開はない。意味のわからない半音の使い方もされない。歌詞もそんなに際どくない。私はaikoaiko性が好きで、aikoがやりたい放題していればいるほどうれしいのに。そうして濃い味に慣れた人が減塩醤油を使わなくなるように、メジャー曲がプレイリストから消えていく。岩塩を噛み砕き、蜂蜜を飲み、七味を吸い、aikoのマイナー曲を厳選する。

でも冷静になってみるとこの理屈、小説に関してはあんまり当てはまってないんだよな。「博士の愛した数式」でボロ泣きしたし、「コンビニ人間」が忘れられないし、「蛇にピアス」が金原ひとみ作品で一番いいと思ってるし。文学賞だって色々あるし。たぶん今日借りた二冊も面白いんだと思う。