パズル禍

家に友人を呼んでパズルをしていて、今もしている。初めは1000pcsパズルだったはずが、ピース数がどんどん増えてアパート全体がパズルと化し、半日の予定が一週間ほど延長している。外には怖くて出ていない。

ピース増えてね? と気づいたのはパズルを始めてから10時間ほど経った頃だった。葛飾北斎富嶽三十六景コレクションパズルの背景を作っていたつもりが、いつの間にか部屋の畳を敷きつめていたのだった。見回すと六畳分の畳と畳に接しているものが全て均等に罅割れていて、驚いて立ち上がったらその振動でぜんぶ崩れた。崩れたあとには真っ白な台紙が、非現実的な曲線を残したまま凸凹していた。困った。このままではとても住めない。友人に泊まり込みで手伝ってほしいとお願いして(友人は私より先にこの状況に気づいていたが、特に何も言わず畳パズルに勤しんでいた)、部屋の復元に取りかかった。居住可否という切実な問題に迫られていても、立体パズルは楽しかった。買うと高いのだ。しばらくは、このボリュームのパズルいくらするかなあ、と呑気に話しながら進めていた。

気づいたら暮れたはずの空が白んでいた。テーブルの組み立てに没頭している友人にいったん寝よ、と声をかけて、しかしパズル化したベッドはまだ手をつけられていないので、押入れから客用布団を出した。幸い、布団は敷いても布団のままでいてくれた。友人が床についたのを確認して電気スイッチを押すと、消灯と同時にスイッチが外れて壁から落ち、拾おうとしゃがんだ頭にバラバラとピースが降りそそぎ、壁のピースが床のピースと混ざった。もう何も見なかったことにして眠った。その繰り返しで今に至る。