凍る

近年稀に見る寒さで凍色警報が発令された。予報では、今年の最低色は白および黒とのことだった。世紀末みたいな騒ぎになった。昔から色相のない色は凍らないと言われていたから、これまでの凍色で溶けたものは全部白で作り直していて(黒は高価なのだ)、街は白くないところを探すのが困難なくらい白くなっていた。当然、白が全部溶けたら何色が出てくるのか、つまり、最も強い色とは何なのか? という話題でもちきりになった。過去の気象データをどれだけ遡っても、溶けたことのない色なんて白と黒以外なかった。一番説得力があったのは、寒波が届かず凍らなかった地下がむきだしになる、という推測だったけど、白いコンクリートの下が何色かなんて誰も知らない。

皆ダウンを重ね着してストーブを焚き、なんとか寒さをやりすごした。しかし半分以上凍った家は翌日には溶け始め、不気味な音を立てて傾いていた。私たちはまだ白い広場に避難し、地下とやらが出てくるのをじっと待った。