ガラス

赤と青の鉱物は極寒などものともせず増殖する。気温が氷点を上回る頃には、硬骨魚の跡地が柘榴石に、軟骨魚の跡地がロンドンブルートパーズによって埋めつくされ、墓は群れをなして泳ぎだしそうなほど鮮やかに浮かび上がっていた。怒りのチェス盤はとっくに絶命していた。水面の網目模様を錆びた銅線に変え、全体は灰褐色の母岩に成り下がり、縁のぐるりから方解石化した鮫の歯を突き出していた。原始世界なら魔除けの神として信仰を得たかもしれないが、人類はまだ発生していないかすでに絶滅している。やがて地殻変動が生じ、母岩は筋肉みたいに盛り上がって纏っていた銅線をばらばらにちぎった。地上に振り落とされた銅線の残骸は、ひどく驚いて裏切られたような気持ちになった(なにせ何万年もの間母岩を封じるという緊張を強いられていたのだ)が行き場もないので、不服のまま岩山のふもとに潜りこんだ。銅線は血の匂いがする粉を吹き出し、風化しそうなほど衰えていた。しかし幸運なことに豊かな地下水を吸って息を吹き返し、松の根になった。一方蛍光グリーンを示していた鮫の歯たちは岩の熱にやられて丸く溶け、冷え固まり、カボションカットを施した半貴石のようになっていた。執念深い松の根は、途方もない努力の果てに岩を突き通し、輝く魚群を木っ端微塵に荒らし、山頂に転がっていた梅のような玉を残らずすくって枝につけ、盆栽のポーズを決めた。