音楽室

音楽室で、友人がピアノを弾いていた。グランドピアノの開いた屋根から何らかの粒子の集まりが、プリズムで分解された光線のように束になってあふれ続け、磨かれた床の上に積もっていった。色とりどりのそれは折り重なった幅広のリボンにも見えた。奥の部屋からドラムセットを引っぱり出してきた友人は、スツールに腰掛けるなりプロさながらの足さばきを披露した。スティックが空を切るたびに、打音から生まれた様々な形のボタンが弾き飛ばされ部屋中に散らばった。いつもアコースティックギターを背負っている友人は、ギターバッグから愛用のそれを取り出してかき鳴らし、ブリッジから絹のような糸を延々と垂らし続けた。別の友人は、私何も弾けないんだよねと言いながらスレイベルを探しあててしゃらしゃら鳴らし、雪の結晶のような細工が連なった青白いレースを編み出した。

ちぐはぐのカルテットは、クラシックでもポップスでもロックでもジャズでもない、知らない音楽を奏でていた。強いて例えるなら遠い国の民族音楽のような、原始的で、あっけらかんとしていながらも一筋の哀愁を滲ませるようなメロディだった。全く洗練されていないのに、音は不思議と調和しているのだった。私は教室から裁縫セットを持ってきて、輪になった友人たちの真ん中にクッションを積んで寝そべった。それから手を伸ばして床に積もったピアノリボンを引き寄せ、適当にカットし、アコギ糸で縫い合わせて広大な布を拵えた。それから手の届く範囲にあるドラムボタンをかき集めて星のように散らし、三段にしたベルレースで一辺の端を飾った。これは自室の窓にでも掛けようと思う。カーテンを作り終えても音楽は続いていた。友人たちは、具現化された色とりどりの音に埋もれて見えなくなっていた。