水を飲むこと

午後休とってガラス教室へ行った。粘土こねたり石膏溶いたりしてるだけなのに、なんでこんなに疲れるんだろう。ふっと息を吐いたら1時間経つように時間が飛び去って、終わった瞬間どっと身体が重くなる。でも内側は内臓ぜんぶ置いてきちゃったみたいに軽くて不安が募る。茫とした空洞に何か入れたくて叫びそうになりながらスポドリ一気飲みしたら全回復した。そういえば何も飲んでいなかった。

休憩中、中世の医者みたいな胡散くささのある先生が、古代ガラスのミステリーを語ってくれた。所有した者は必ず破産するという呪いの壺。光を当てると色を変える、未だ作り方が解明されていない花器。白雪姫の小人はガラス職人の暗喩という説。先生のキャラクターと怪談めいた口調が相まって、空間全体がフィクションの世界にすり替わった。私は涼しい教室でせんべいを齧りながら、海岸で揺れる焚火を見つめていた。