ない島

一日に七色の光が巡る原始的な島があるとして、ありとあらゆる存在がその光に応じた名前を持ち、そのすべてが別個のものと見なされていたらどうなるだろう。

ここでの別個のものというのは亜種ではなく、全く別のもののことを指す。例えば私達は赤いりんごと青いりんごを区別するが、そこに共通する特徴を見出し、どちらもりんごであると認めている。存在しない島民は朝日に照らされたりんご※便宜上私達の言葉を借りるが島には別の名前がある※をアクセサリーとして、夕陽に照らされたりんご※同上※を家具として認識するので、果物として認識される正午か肉として認識される深夜にしか食べることはできない。昼食をとっているジャック※と晩酌をしているジャック※は別人と見なされ、明け方のジャック※が所有する畑※は赤い夕方には海として、青い夕方には雪原として扱われる。一日を通して変わらないのは自我しかない。島民は物事をパターン認識する能力を著しく欠いており、厳密に目に見えるまま、意味をもたない意味を世界に汎濫させている。

世界はアメーバのようにゆるやかにしかし規則的に、刻一刻と変化しつづける。7倍の意味をもつ森羅万象が絡み合うことで生じる認識と関係性は、天文学的数字を以て私達の理解を超えていく。言葉を用いて、光が規定する違いを認識し守ることのできる島民ですら、安定して思考することはできないだろう。無数に砕けてみな丸くなる河原の石のように、増えすぎた意味は意味を洗われて無意味になる。文字通り極彩色の島は島民の認識世界で色を増しつづけていく。そこで私は島民を窓のない昼光色の部屋に閉じ込める。部屋には島に存在したすべてがあるが、島民はLEDライトの光など見たこともないので何にも意味を見いだせず、ただの凹凸しか認識できない。情報量の激しい落差に脳はショートし、幻覚を生じさせ、身体の内側で大爆発が起こり、爆発は島民の間で連鎖する。私は爆発した部屋ごと生ゴミに出す。

私は爆発が好きなのですぐ爆発させますが、爆発させるということは思考停止するということで、つまり眠いということ。おやすみなさい。