オレンジジュースの幻影

本当に美味しいものを食べているとき、決まって、アアアアア脳内にオレンジジュースがほとばしっている! と思う(たぶん、こめかみあたりから頭蓋骨全体がジュワーッとしびれていく感覚が激流を彷彿とさせ、また、個人的にエネルギー値高そうと思っている液体の筆頭がオレンジジュースなので、そのようなイメージになっている)。美味の快楽に没入し、全身を味蕾にしてその世界に浸る。何も考えられなくなるので直前までしてた会話とか話そうとしてたこととか全部忘れる。旨味の暴力だ。そんな経験はないが、ボコボコに殴られているときも、きっと意識のすべてが痛みという知覚に支配されるので、まさに暴力なのだ。目の前で同じものを食べていた友人に感極まりながらそう話すと、「わかる、トランス状態よね」と言われ、トランス状態! その言葉を探していた...とさらに感動した。

いったい何を食べたんだよという感じですが、出汁しゃぶです。なんかいろいろ入ってる一番だし(これだけでめちゃくちゃ美味しい)にこれでもかと追い鰹し、弱火で煮立ったところに黒豚を泳がせる。旨味の例文みたいな料理だった。家でも作ってみよう。