奈良(正倉院展)

ホテルをチェックアウトして正倉院へ向かう。正倉院展なら正倉院へ行かなきゃ〜、と何も調べず正倉院の建物へ向かってしまっていたが、展示会場は奈良国立博物館だった。よく考えたらあんな高床式倉庫で展示ができるわけないんだけど、二人とも歌を詠んでいたので気づかなかった。そもそも詠みながら道に迷い続けていたので正倉院すら辿り着けなかった。右往左往していたら通りかかったタクシーに拾われ、なんとか入場予約時間に間に合った。

展示の中に、一抱え以上ある大きな銀壺があった。表面に鏨で狩猟の風景などが打ち出されている。蝶や鹿や植物や流鏑馬、色々いるなと見ていたら、散在する絵の背景にびっしりと直径数ミリの点が打たれていることに気づいて驚愕した。小円の刃を繰り返し打つ魚子打ちという技法らしいが、こんなのを銀壺全面に施すなんて正気の沙汰じゃない。というか一切の空白を許さない文様って、見ていて不安になる。モスクのモザイクタイルと、統合失調症の画家が描いた猫の絵を思い出した。あとは、漆を塗りこめて金銀の薄板で装飾した皮製の箱(皮製なのにきれいに面取りしてあってすごい)と、象牙や鹿の角で一面に文様を貼った紫檀の木箱がよかった。とにかく高級な素材を使って豪奢を尽くしました! みたいな箱は説明読んでてワクワクするから好き。

それから奈良ホテルのラウンジでおやつを食べて、ホテル内の庭園で遊び、鹿と遊び、旅館へ帰った。この日は雨が降ったせいで紅葉した木々に霧がかかっていて、どこを歩いても幻想的だった。