フライドポ人

ベッドからずるずると抜け出したら、パジャマと、厚み一センチくらいの生皮が布団の中に残って、首から下が新鮮な桜色になってしまった。布団が重すぎたせいだと思う。無性にエビフライが食べたくなって(抽象的な共食い)、揚げ物のシミュレーションをした。私にとって揚げ物とは料理より溶接に近い危険な作業なので、シミュレーション内容は事故の想定となる。具体的には、鍋を覗き込んだ瞬間に高温の油が爆発し全顔・頭皮に深達性Ⅱ度の火傷を負う想定で、めっちゃ、痛......。ただでさえ首から下の体積が減ってカニのむき身みたいになってるのに、頭まで腫らしたらもうバランス取れずに転んでしまう。

最悪な気分を立て直して、布団の中からパジャマと衣を引っ張り出した。パジャマは洗わないと臭くなるし、衣は捨てないと虫が湧く。パジャマは洗濯機へ、衣はバスタオルにくるんでゴミ袋へ、私はパーカーを着てゴミ袋を持って外へ。今日ゴミの日じゃないけど捨てちゃえ。気分が良くなったので、そのまま散歩することにした。靴がぶかぶかだ。しかし誰もいない。上位存在警報が鳴っている。

曲がり角を何回か曲がったあたりで、何かがきらめいた。しゃぼん玉? 反射的に身体が動き、両手で思いきり割る。しゃぼん玉に見えた何かは爆発し、激痛とサラダ油の匂いを一瞬だけ感じて、気づいたらパーカーごと揚がって尻もちをついていた。上位存在はカリカリサクサクのフードを摘み、私をおやつに食した。