くらげ病

気分がすぐれない日が続いている。明確にどこが悪いというのでもないんだけど、まるで大きなあめ玉を飲みこんだような、吐き気の伴わない車酔いのような、くすぐられる感覚から笑いを抜いたような、もやもやとした落ち着かなさが身体の真ん中に居座っている。不安なので内科を予約した。

レントゲンの結果、「くらげが内臓をぬって泳いでます」と診断された。聞き間違いかと思って首を傾げていると、医師はモニターをこちらに向けて、くらげです、と言い直した。写真を見ると確かに、腹のあたりにくらげ形の影が映っている。医師によると、これを取り除く方法は外科手術以外ないが、くらげは腹腔内でもぞもぞする以外は無害かつ半年ほどで溶けて自然に排出されるので、治療の必要はないとのこと。それでも普通に気持ち悪い。ぞっとしながらモニターを指し、レントゲン写真貰えますか、と頼んだ。そんなことを言うつもりは全く無かったので驚いた。医師は酔い止め薬と、用意していたらしいレントゲン写真のコピーをくれた。

会計を待つ間、くらげが何を食べるのかものすごく気になって検索して、「基本何でも」ということがわかった。それでは困る。とりあえず、桜エビを五袋買った。帰宅してボウル一杯の桜エビをさくさく食べながら、デスクに置いてあった写真立てをひっくり返し、飼い猫の写真を抜いて捨てた。そしてレントゲン写真からくらげの部分を切りとって猫の代わりに入れ、一番いい窓際に飾った。