ほっぺ

数ヶ月前に買った幼珠のペンダントがやっと届いた。受注販売かつ数十分間で売り切れる激レア品。これでボーナスが吹っ飛んだけど後悔はない。ただただ嬉しい。

すりガラスのような和紙を慎重に剥がし、桐箱を開けると、ふわふわの茶髪がおくるみ代わりに入っていた。ほのかにミルクの香りがして、羽毛のように軽い。贅沢な梱包材だ。和毛の奥には、待ち焦がれた幼珠が息をひそめていた。すべらかで、ほんのり赤みがさした色白で、金色のうぶ毛が光っている。そっとつつくとほにほに凹む。凹むがもっちりとした弾力があり、指を離せば球体に戻る。ほとんど真円球だ。つまみ上げて矯めつ眇めつしても、綴じ目が全くわからない。一体どう処理してるんだろう。

首から下げて鏡の前に立つと、幼珠は箱の中で見るよりずっと生き生きして、呼吸しているのかと見紛うほどだった。朴の無垢材を丸くくり抜いて作ったビーズチェーンは、ペンダントトップからうなじに向かってだんだんと小さく、色が濃くなるよう組み上げられていて、そのグラデーションが実物以上の奥行きを生みだしていた。幼珠の穴は球の中心でなく上部に、皮膚をすくうようにあけられていて(穴一つとっても、血止めの跡を見せないよう技巧が凝らされているんだから心憎い)、胸からこぼれ落ちそうな儚さが演出されていた。このデザインは、薄い肉が裂けて幼珠が落ちてしまわないよう、穴にかかる重量の計算を繰り返してようやく実現できたという。にしてもほんとに綺麗。高騰前に買えてよかった。