寄生される石

蛆石の季節がやってきた。狙い目は石垣だ。丸い石を探すなら川原と思われがちだし、もちろん川原にも蛆石はあるんだけど、川は撒かれた胞液を洗い流してしまうから群生しづらい。一つ見つけても次が近くにあるとは限らず、数を集めるのに苦労する。その点石垣は、歯抜けになった箇所さえ見つければこっちのものだ。抜けているということは、去年以前に蛆石が羽化して胞液を撒いているということで、周辺に積まれた石が食べごろの蛆石になっている可能性が高い。川原より確実に収穫が得られる。

ということで、丁度いい石垣から30個ほど蛆石を取ってきた。本当はもっと取りたかったけど、同じ場所から一度に取りすぎると石垣全体が崩れて大惨事になる。ツルハシで軽く叩いてみて、その感覚を頼りに殻の薄そうな石を厳選するのがコツだ(殻の薄い蛆石はそれだけ石の部分が蛆に置き換わっているということだから、可食部が多いし割りやすくていい)。ザルに入るだけ入れてさっと水に通し、一つずつ割っていく。厳選しているとはいえ卵殻ほど脆くはない。シンクの角に何度か打ちつけて一周罅を入れ、果物ナイフでパキパキと石を剥がすと、冷えたバターくらいの硬さの、淡黄色の身が出てくる。身は薄い膜に包まれていて、石にぴったり押しつけられていたせいで表面がざらざらになっている。空気に触れると膜も中身も液状に溶けるので、こぼさないようボウルの上で剥くようにする。

10個ほど剥き終えたところでボウルが満杯になった。製氷器で固めて保存するかジャムにするか迷って、ジャムにした。十分煮詰めて、冷やす前に味を見ると、そらまめのほっくりとした風味にナッツみたいな香ばしさが感じられて幸せになった。美味しい。甘いのも好きだけどおかずにしてもいいかもしれない。残りは白だしを入れて茶碗蒸しにしようと決めて、ジャムを瓶に詰めた。