魔法瓶

エアコン切って電気炉焚いて無心でガラスを砕きつづけた。暑いし手が痛いし粉塵吸って咳は出るし朦朧としながらなんでこんなことしてるんだろうって意味わからんくなってくる。でもガラス粉をふるい分けるのは神聖な気持ちになるので好き。言うなれば泥だんごの仕上げをするのに似ている、掌をふるい代わりにしてさらさらの砂を選り分ける静かな興奮。完全なパウダー状になったガラスは粉砂糖、30目〜60目のは降りたての雪、それ以上の粗さは水晶のかけらみたいで気持ちよくて延々と触ってしまう。咳が止まらなくて、そんなわけないんだけど肺胞にきらきらのガラス粉がびっしり詰まっている様子を想像してちょっと憧れる、方解石で埋められた大きなアンモナイトの化石がほしい。私も死んだら方解石化したい...と一瞬思ったけどそれはどっちでもいいや、方解石化した大切な人の遺骨がほしい。加工してお守りにする。お守りといえば昨晩一人で飲まないという信条を捨てて日本酒飲んだらすべてが大丈夫になって感動したので酒をお守りにしたいんだった、めっちゃ度数の強いやつを香水瓶みたいなのに入れてネックレスにして持ち歩きたい。飲まなくてもみぞおちあたりを温かく保てて安心できそう。魔法の水。魔法瓶。魔法瓶ほど言葉と実物とのギャップが激しいものってないよな。