奇妙なエビ

粘土でアノマロカリスを作っている。まだ途中だけど、ぱっと見てアノマロカリスだ、とわかる程度にはできていてかわいいので、うれしくて何度も眺めてしまう。家にカンブリア紀の王者がいる! アノマロカリスが仕上がったら四分の一ほどの大きさでピカイアも作って、ウミユリ文様も作って、みんなカップに集合させるつもり。

家でやっているのはパート・ド・ヴェールという技法で、とんでもなく工程が多くて面倒くさい。面倒くさすぎて吹きガラスが発明されてから一瞬で廃れ、再興してもまた廃れ、幻の技法と呼ばれるようになったという。粘土で外側の原型を作って石膏をかけて固めて内側の原型を作って石膏をかけて固めてそれぞれの石膏型を修正して外型と内型を石膏でくっつけて湯口(ガラスの入口)を石膏で作って型の上につけて1週間くらい自然乾燥させて粉ガラス(これも地道に砕いて作る)を詰めて、電気炉に入れる。こんなに面倒なのに、焼成で石膏型が崩壊したりガラスがうまく溶けて型に流れなかったり傾いたりしてよく失敗する。焼成前のすべての工程にあらゆる失敗の要因がひそんでいる。うまく焼成できてもガラス表面は石膏肌でガビガビなので、何時間も研磨しなくてはならない。そりゃ廃れるはずだ。

でも粘土原型がそのまんまガラスになってくれるので、造形の自由度が高い。吹きではできないような繊細な、絵画みたいな表現ができる。また無数の気泡が入るせいで半透明に仕上がり、内側に孕まれる光が柔らかくなる。それがなんとも神秘的なのだ。愛。少しずつでも上手くなりたいな。