遺骨

母が死んだ。俗に言う唐草病だった。3年かけてゆっくりゆっくり進行して、動けなくなって入院してからも1年経っていた。

唐草病はあまり知られていないのと、骨を侵すということで、骨粗鬆症に似た病気だとよく誤解される。実は全然違う。母は生前一度も骨折をしなかったし、骨密度は基準値を大きく超え、骨質検査でも理想的な数値を出していた。動けなくなった理由は、病が進行して骨の末端まで鋭利な蔦となったせいで、関節と肉が破壊されたことだった。最期は全身が痛々しく腫れていた。

母の遺骨は、話に聞いて想像していた何倍も美しかった。異常に硬化した骨細工は焼いても欠け一つなく、磁器のように白く輝いていた。大腿骨は宮殿の柱、肩甲骨は総刺繍の絹織物、指の骨は螺鈿細工、頭蓋骨は卵彫刻に似ていながら、どれも人の手では作り得ない緻密さで、実在が疑わしいほどだった。発症後かなり長く保ったから骨の凝縮が極まっていて、文様がより硬く繊細に仕上がったのだという。ところで唐草病で死んだ者の骨上げをした者は、その美しさに惹かれるあまり自身も唐草病を発症してしまうという迷信がある。なんて不謹慎なと思っていたけど、今となっては、あれが迷信でなく本当だったらと願わざるを得ない。とりあえず両の人差し指はピアスに仕立てようと決めて、Amazonでピアッサーを注文した。